「宅建業者(宅建業免許)」と「宅建士」。どちらも似ている言葉ですが、一体どのような違いがあるのでしょうか。今回はこの2つの言葉の意味を説明していきたいと思います。
結論から言うと、両者は全く異なるものになります。
言い換え得ると、
「宅建業者」:街の不動産会社のことで、宅建業免許とは、不動産業を始めるための資格
「宅建士」:不動産会社に雇われている法律の専門家のことで、不動産取引で重要事項の説明と契約書への押印が可能な資格
ということになります。
つまり宅建士だけ持っていても不動産屋の開業は出来ないということです。
逆に宅建業免許は、専任の宅建士が居ないと大阪府から許可が下りません。
宅地建物取引業は5人に1人、登録された宅建士の配置が必要です。
1.宅建業者とは
1-1.正式名称
宅建業者をもっと正確な言葉にすると「宅地建物取引業者(たくちたてものとりひきぎょうしゃ)」となります。
では宅地建物取引業者という言葉を分解してみましょう。
宅地とは土地のことを指し、建物とはそのまま建物のことです。取引は売ったり買ったりすること(売買)、貸したり借りたりすること(貸借)を指しています。
つまり宅地建物取引業者とは土地・建物の取引の業者という意味であり、それを短くしたのが「宅建業者」となります。
1-2.宅建業者として働くためには
日本の法律では、勝手に不動産会社を作って活動してはいけないことになっています。
正式に宅建業者として事業を開始したいなら、きちんと都道府県や国土交通大臣に申請して「宅建業免許」をとらなばなりません。
免許をとるためには色々な条件を満たすことが必要で、申請のためには煩雑な手続きhが必要となるため、行政書士に依頼するケースも多いです。
1-3.宅建業免許の要件
先程の通り、宅建業免許とは、不動産業を始める際に必要な免許と宅建業法で定められており、個人でも法人でも取得可能となります。
具体的な要件は以下となります。
- 法人の場合は事業目的に宅建業と記載されていること
- 代表者や役員が欠格要件に該当しないこと
- 事務所に専任の宅地建物取引士が在籍していること
- 従業員の5人に1人は取引士であること
- 要件に適合した事務所があること
- 国に供託金を納めるor団体に加入していること
こちらの要件を満たせば、宅建業免許の許可がおり、不動産業を始められることになります。
2.宅建士とは
2-1.正式名称
「宅建士」をもっと正確な言葉にすると宅地建物取引士(たくちたてものとりひきし)となります。
宅地建物取引士という言葉を分解してみると、先に触れたように宅地とは土地のことで建物は建物のこと。取引は売買や貸借のことです。
士はサムライのことですが、現代の日本では法律の専門家のことを呼ぶときに「士」を使うことが多いです(弁護士、司法書士などがその例)。
以上をまとめると宅地建物取引士は「土地・建物の取引に関する法律の専門家」のことであり、それを短くしたのが「宅建士」です。
2-2.宅建士になるには
不動産取引の勉強をしたからといって勝手に宅建士を名乗ると法律違反になってしまいます。宅建士として活動するためには宅建試験に合格し、都道府県に資格登録をする必要があります。
資格登録が完了すれば宅地建物取引士証が交付され、無事宅建士として働くことが可能になります。
ただし宅地建物取引士証として資格登録するためには、以下の要件が必要となるので、注意が必要です。
- 宅建士資格試験に合格
- 実務経験2年以上
- 登録の欠格要件に該当しない
- 年齢制限(未成年不可)
2-2.宅建士の仕事内容
宅建士の仕事は大きく分けて2つあります。
- 取引に関する重要事項説明書の交付と説明
- 不動産取引の契約への署名押印
・取引に関する重要事項説明書の交付と説明
重要事項の説明は、宅建業法第35条に基づいて行われる業務です。
不動産取引(媒介、売買、交換)の各当事者に重要事項を説明すること、いわゆる重説と言われるものです。
説明する内容も宅建業法で厳格に定められています。
(実務的にはトラブル予防の観点から、法令で定められたものより、詳細に説明する会社も多くあります。)
・不動産取引の契約への署名押印
こちらも、同じく宅建業法第37条に記載された宅地建物取引士の独占業務となります。
不動産取引の内容を契約書に落とし込んで、賃貸や売買など取引内容を明確にします。
この契約書は契約内容記載書面(37条書面)と呼ばれています。
契約書の内容を宅建士が確認して、間違いない事を証明するために記名押印します。