退去強制手続と出国命令制度について

以前のブログにて、オーバーステイ(不法滞在)した場合の対応方法を説明しました。

不法滞在した場合、強制的な国外退去の手続きがとられます。それが「退去強制手続」と「出国命令制度」です。

今回は退去強制手続と出国命令制度についてご紹介します。

 

1.退去強制手続と出国命令制度の違い

撤去強制手続と出国命令制度は、いずれも国外退去であるという点は同じですが、次のような違いがあります。

 

 

退去強制手続では国外退去まで入管に身柄を収容されますが、出国命令制度では収容されることがありません。

また、日本への入国禁止期間も、出国命令制度であれば最短の1年間になります。
ルールを違反した外国人に対しては通常は退去強制手続がとられますが、後述の条件を満たす場合に特例として出国命令制度がとられます。

 

2.退去強制手続

入管の摘発等でルール違反が発覚すると、違反についての調査がなされ、当該調査に基づいて審査が行われたのち強制送還が決定されます。

 

2-1.対象となるルール違反

退去強制手続の対象となるルール違反は入管法第24条に列挙されています。代表的なものは次のとおりですが、特例である出国命令制度の対象となるのは不法残留だけです。

 

  • 不法入国・・・パスポートを持たずに、または偽造パスポートで入国
  • 不法在留・・・オーバーステイ
  • 不法就労・・・ルールに反して働いて収入や報酬を得る
  • 刑罰法令違反・・・懲役又は禁錮実刑に処せられる

 

2-2.最大3段階の審査

審査の結果強制送還となった場合、外国人は「審査結果が誤っている」という異議や、「審査結果は誤ってはいないが、特別に日本での在留を認めてほしい」という希望を、2回まで申し出ることができます。

 

第1段階 違反審査(意義等の申し出)

第2段階 口頭審査(意義等の申し出)

第3段階 法務大臣の裁決

 

2-3.在留特別許可

第3段階の法務大臣裁決の際、本来であれば強制送還されるべき外国人に対して,特別に在留を許可すべき事情があると認めるときに、法務大臣は特例として在留の許可を与えることができます。

これは「在留特別許可」と呼ばれ、本許可を受けた外国人は引き続き滞在できるようになります。

 

3.出国命令制度

入管法が定めるルールを違反のうち、オーバーステイ(不法滞在)の外国人が帰国を希望して自ら入管に出頭した場合、一定の条件を満たすことを条件に、出国命令制度が適用されます。

なお、「自ら出頭すること」が必要ですので、入管や警察が摘発した場合は、出国命令制度の対象者にはならず、退去強制手続がとられます。

 

3-1.満たすための要件

出国命令制度が適用されるには、以下の要件を満たす必要があります。

  • オーバーステイ以外のルール違反がない
  • 過去に退去強制手続や出国命令制度により国外退去になったことがない

 

3-2.出国命令制度の流れ

退去強制手続と同様、まずは違反についての調査がなされます。

当該調査に基づいて審査が行われ、出国命令制度の対象者として認められると、15日を超えない範囲内で出国期限が定められます。外国人はその期間内に出国します。

 

4.おわりに

本記事では退去強制手続と出国命令制度それぞれの詳細を紹介するとともに、両者の違いについて紹介しました。どちらが適用されるかによって、身柄収容の有無や入国禁止期間などに違いが生じます。

巨群行政書士法人では、外国人の雇用や在留資格に関するトータルサポートを実施していますので、お気軽にご相談ください。

 

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